兵庫県南部地震では,地震直後には阪神間の多くの住民はもとより耐震構造の専門家も激しい衝撃的上下動を受けたことを認識していましたが,2,3ヶ月後に地震計の記録が発表されてからは専門家の認識は薄らぎ,上下動が構造物に与える影響は少ないと結論づけられ,その後に改正された耐震設計法には上下動の影響は全く反映されなくなりました.また,兵庫県南部地震以降にも新潟県中越地震や熊本地震など直下型大地震が発生し,衝撃的上下動によると思われる損傷が土木・建築構造物に見られましたが,今日の耐震設計法においても上下動の影響は考慮されないままになっています.
"比較的震源の浅い直下地震においても上下地震動が構造物の損傷に与える影響は全く無いのだろうか?"
震源の浅い直下地震での地盤内を伝播する波動には縦波と横波に分けられるが,地表面近傍に位置する構造物への突き上げ力は縦波(疎密波)に起因するところが大きいと思われます.海上を航行する船舶が地震時に受ける衝撃圧は海震現象として古くから知られています.したがって震源から地盤内を上方に伝播して地表面近傍の構造物に与える地震力は横波の影響だけではなく縦波の影響も受けることは十分に考えられます.
以上のような認識の下で,本調査研究委員会は,主として兵庫県南部地震で大きな損傷・破壊が見られた道路橋の鉄筋コンクリート橋脚に着目して,基礎地盤の深部から上方に伝播した縦波が橋脚基礎面での反射に伴う突き上げ力による柱部の損傷・破壊のメカニズムを明らかにした上で,現行の耐震設計法に基づいた鉄筋コンクリート橋脚が,都市直下大地震を受けた場合,柱部を守るための突き上げ力に対する緩衝構造を提案することを目的として活動して参りました.
このたび,その成果を踏まえ,下記の要領で講習会を開催し,研究成果をご報告申し上げたいと存じます.奮ってご参加下さいますようご案内いたします.